TVシリーズ「ONE PIECE」冬島編(78話~92話)|心に届く奇跡の桜!チョッパーが仲間になる感動の物語を徹底解説

グランドラインでの冒険の途中、航海士のナミが原因不明の病に倒れるという緊急事態に見舞われた麦わらの一味。TVアニメ第78話から第92話にあたる「冬島編」では、医者を求めて上陸した雪の島「ドラム王国」での、心温まる出会いと奇跡の物語が描かれます。

この記事では、麦わらの一味に新たな仲間が加わる、ONE PIECE屈指の感動エピソードとして知られる冬島編のあらすじや登場人物について、詳しく解説していきます。

ストーリー

リトルガーデンを出航した直後、ナミが高熱で倒れてしまう。一刻も早く医者に見せるため、一行はビビの反対を押し切り、記録指針(ログポース)にはない未知の島、「冬島」へと進路を取ることを決断する。

医療大国ドラムへの上陸(78話〜80話)

一行がたどり着いたのは、雪に閉ざされたドラム王国。しかし、かつて「医療大国」と呼ばれた面影はなく、元国王ワポルの悪政「医者狩り」によって国中の医者は追放され、国民は医療を受けられずにいました。島に唯一残る医者は、標高数千メートルにも及ぶとされる雪山「ドラムロッキー」の山頂に住むという139歳の〝魔女〟Dr.くれはただ一人。上陸したルフィたちは、ワポル軍の残党に襲われますが、そこで出会った元守備隊長のドルトンに助けられます。ドルトンから国の惨状と、Dr.くれはが山頂の城にいることを聞いたルフィは、高熱にうなされるナミを背負い、サンジと共に極寒のドラムロッキーを登り始めるのでした。

ドラム城への険しい道のり(81話〜83話)

ドラムロッキーの登山は想像を絶する過酷さでした。行く手を阻む雪崩や、巨大な肉食ウサギ「ラパーン」の群れ。仲間を救いたい一心で進むルフィとサンジですが、サンジは雪崩からルフィたちを庇って重傷を負ってしまいます。それでもルフィは諦めません。動けなくなったサンジとナミの二人を抱え、ボロボロになりながらも、ただひたすらに山頂を目指します。その姿は、当初は敵対していたラパーンたちの心をも動かしました。そして、満身創痍のルフィは、凍傷で感覚を失った手足で垂直の崖をよじ登り、ついに山頂のドラム城へとたどり着くのです。

ヒトヒトの実のトナカイと魔女(84話〜88話)

ドラム城で気を失ったルフィたちを介抱したのは、人語を解する青い鼻のトナカイ、トニートニー・チョッパーでした。彼は悪魔の実「ヒトヒトの実」を食べたことで人語を話し、医学を学び、人間のような思考や感情を持つようになります。ゾオン系の悪魔の実としては珍しく「動物→人間への進化型」として特異な存在。その特異な姿から、トナカイの群れからも人間からも「バケモノ」と疎まれ、孤独な日々を送っていました。そんな彼の心を救い、息子として迎え入れたのが、心優しきヤブ医者Dr.ヒルルクです。チョッパーは、亡きヒルルクの「不治の病というものはない」という信念を受け継ぎ、Dr.くれはの下で医学の修行に励んでいたのです。しかし、そんな穏やかな日々は、国を捨てて逃げ出していた元国王ワポルが帰還したことで、終わりを告げます。

受け継がれる意志と満開の桜(89話〜92話)

城に攻め込んできたワポルは、チョッパーにとってヒルルクの形見であり、信念の象徴でもあるドクロの海賊旗を「くだらない」と嘲笑します。その言葉に激怒したルフィは、「これはお前の冗げんで立てた旗じゃねェんだぞ!!!!」と叫び、砲弾が飛び交う中、命懸けで城の頂に立つ旗を守り抜きます。そして、ワポルの能力「バクバクの実」に苦戦しながらも、仲間への想いを乗せた渾身の一撃で、空の彼方へと吹き飛ばしました。戦いの後、Dr.くれはは、ヒルルクが30年もの歳月をかけて研究していたヒルルクが夢見た「国の病を治す桜の研究」を完成させ、ドラムロッキーを桜色に染め上げました。それは、ドラムロッキーの雪を桜色に変える特殊な砲弾でした。冬島に満開の桜を咲かせるという、かつてヒルルクが見た奇跡の光景は、人々の凍てついた心を温かく溶かしたのでした。この光景に背中を押されたチョッパーは、ルフィからの「うるせェ!!!いこう!!!!」という魂の誘いに涙で応え、麦わらの一味の船医として、大海原への冒険に出ることを決意します。

冬島で出会った人々

この物語は、船医チョッパーの加入だけでなく、彼の人生に大きな影響を与えた人物たちとのドラマが深く描かれています。

トニートニー・チョッパー

悪魔の実「ヒトヒトの実」を食べた、青い鼻のトナカイ。基本的な3形態に加え、のちに7段階の変形を可能とする“ランブルボール”を開発する。かつてはその異質な姿から誰にも受け入れられず深い孤独を抱えていましたが、Dr.ヒルルクとの出会いによって人の温かさを知りました。ヒルルクの死後は、彼の遺志を継いで万能薬になることを目指す心優しき医者です。麦わらの一味の6人目の仲間として、船医の役目を担います。

Dr.くれは(ドクトリーヌ)

「ハッピーかい?」が口癖の、139歳(当時)のパワフルな老婆。チョッパーからは「ドクトリーヌ」と呼ばれています。法外な治療費を請求するため「魔女」と恐れられていますが、その医療技術は超一流。亡きヒルルクとは憎まれ口を叩き合う仲でしたが、彼の唯一無二の親友であり、その夢を誰よりも理解していました。

Dr.ヒルルク

チョッパーの名付け親であり、心の恩人。元は大泥棒でしたが、ある山で見た奇跡の桜に心を救われ、医者になることを決意しました。腕はヤブ医者そのものでしたが、「病んだ国を救いたい」という情熱は本物でした。彼の遺した「人はいつ死ぬと思う…?」から始まる魂の言葉は、チョッパー、そして多くの人々の心に深く刻まれています。

ワポル

ドラム王国の元国王。何でも食べることができる悪魔の実「バクバクの実」の能力者。国民の健康を人質に取る「医者狩り」を行うなど、己の欲望のためなら手段を選ばない、自己中心的で卑劣な暴君です。黒ひげ海賊団の襲撃に恐れをなして国を捨てましたが、再び支配者として君臨するために戻ってきました。

ドルトン

ドラム王国の元守備隊長。動物(ゾオン)系悪魔の実「ウシウシの実 モデル・バイソン」の能力者です。かつてはワポルに仕えていましたが、ヒルルクの死に様を目の当たりにして反旗を翻しました。ワポル逃亡後は、残った国民をまとめ上げるリーダー的存在となり、誠実な人柄で国民から厚い信頼を寄せられています。

まとめ

「冬島編」は、新たな仲間チョッパーの加入を描くと同時に、「人の意志はいつ受け継がれるのか」という、ONE PIECEの根幹をなす重要なテーマを問いかける物語です。Dr.ヒルルクが遺した信念の旗と、冬空に咲き誇った満開の桜は、麦わらの一味の旅、そして私たちの心に、決して消えることのない温かい光を灯してくれました。シリーズ屈指の感動エピソードとして、今なお多くのファンに愛され続けています。