
作品の概要
劇場版「ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島」は、2005年3月5日に公開された「ONE PIECE」の劇場版アニメーション映画第6作目です。上映時間は91分。
本作は、後に「時をかける少女」や「サマーウォーズ」などを手がける細田守監督が監督を務めた作品であり、その独特の演出やシリアスなストーリー展開から、ファンの間ではシリーズ屈指の異色作また問題作として語られることも少なくありません。従来の「ONE PIECE」の劇場版とは一線を画すダークな雰囲気と、麦わらの一味の絆が試される重厚な物語が特徴です。
ストーリー
グランドラインを航海中、麦わらの一味は「オマツリ島」というリゾートアイランドの招待状と地図を発見します。「スパ&エステ、世界の美女と満願全席のフルコースで癒される…」という夢のような誘い文句に惹かれ、早速オマツリ島へと舵を切るルフィたち。
島に到着すると、華やかなテーマパークのような光景が広がり、派手な歓迎を受けます。しかし、そこは島の主であるオマツリ男爵が支配する、恐るべき秘密が隠された島でした。男爵はルフィたちに「地獄の試練」を乗り越えれば秘密の宝を与えると持ちかけ、ルフィはこれを快諾します。
一見楽しげな祭りの屋台ゲームのような試練が始まりますが、それは麦わらの一味の絆を試す過酷なものへと変貌していきます。試練が進むにつれて仲間たちは苛立ちを募らせ、次第に不協和音が生じ、仲間割れへと発展。そして、一人また一人と仲間が姿を消していくという不穏な事態に。
チョッパーとロビンは島の異変に気づき、オマツリ男爵と島の恐ろしい秘密に迫っていきます。果たしてルフィたちは、オマツリ男爵の野望を打ち砕き、仲間たちを無事に取り戻すことができるのでしょうか。そして、オマツリ島に隠された悲しい秘密とは一体何なのか…?
予告編
登場人物
麦わらの一味
- モンキー・D・ルフィ (声: 田中真弓): 麦わらの一味の船長。「秘密の宝」という言葉に惹かれ、オマツリ男爵の「地獄の試練」に安易に挑みます。しかし、試練が進むにつれて仲間との間に亀裂が生じ、次第に精神的に追い詰められていく様が描かれます。
- ロロノア・ゾロ (声: 中井和哉): 三刀流の剣士。試練における些細なことからサンジと激しく対立し、普段の冷静さを失っていきます。仲間が次々と消えていく中で、疑心暗鬼に陥る場面も。
- ナミ (声: 岡村明美): 麦わらの一味の航海士。当初はリゾート気分でしたが、試練の過酷さと仲間たちの不和に心を痛め、恐怖を感じます。
- ウソップ (声: 山口勝平): 麦わらの一味の狙撃手。仲間同士の衝突や不気味な島の雰囲気に恐怖し、精神的な弱さを見せますが、仲間のためを思う気持ちも描かれます。
- サンジ (声: 平田広明): 麦わらの一味のコック。ゾロとの対立がエスカレートし、一味の分裂を招く一因となります。料理の腕を振るう機会はほとんどありません。
- トニートニー・チョッパー (声: 大谷育江): 麦わらの一味の船医。純粋な心を持つため、島の異様さや仲間の変化を敏感に感じ取り、恐怖に怯えます。ロビンと共に島の秘密に近づいていきます。
- ニコ・ロビン (声: 山口由里子): 麦わらの一味の考古学者。他の仲間たちが感情的になる中、冷静に状況を分析し、オマツリ島の謎と男爵の正体を探ろうとします。
オリジナルキャラクター
- オマツリ男爵 (声: 大塚明夫): 本作のメインの敵であり、リゾートアイランド「オマツリ島」の支配者。肩にリリー・カーネーションという花を咲かせている長身の男。かつて信頼していた仲間たち(レッドアローズ海賊団)を嵐で全て失ったという深い悲しみと孤独を抱えています。そのため結束の強い海賊団を憎み、彼らが仲間割れするのを見て愉悦を感じる歪んだ嗜好を持つようになりました。「地獄の試練」を仕掛け、海賊たちをリリー・カーネーションの餌食にしています。
- リリー・カーネーション (声: 渡辺美佐): オマツリ男爵の肩に寄生している巨大な花。美しい見た目とは裏腹に、生きた人間(特に強い海賊)を栄養源とし、死者を不完全な形で蘇らせる能力を持つ恐ろしい植物。島の頂上に本体とも言える巨大な捕食器官があり、そこから無数の矢を放って攻撃することもできます。
- ムチゴロウ (声: 草尾毅): オマツリ男爵の部下。第2の試練「金魚すくい」に登場。
- ケロジイ (声: 青野武): オマツリ男爵の部下。第2の試練「輪投げ」に登場。ケロショット、ケロデーク、ケロコとの4人におけるリーダー的存在。
- ケロショット (声: 佐藤正治): オマツリ男爵の部下。第2の試練「輪投げ」に登場。攻撃の要。
- ケロデーク (声: 八奈見乗児): オマツリ男爵の部下。第2の試練「輪投げ」に登場。修理が得意。
- ケロコ (声: 山本圭子): オマツリ男爵の部下。第2の試練「輪投げ」に登場。最年少で紅一点。
- DJガッパ (声: 池松壮亮): オマツリ男爵の部下。第3の試練「射的」に登場。話すとき語尾に「プ」をつける。頭の皿が爆弾になっており、それを投げつけて攻撃する。
- コテツ (声: 綾小路翔(氣志團) – 特別出演): オマツリ男爵の部下。コック。晩餐会でサンジと鉄板焼き対決を繰り広げ、特製焼きそばを作るが、焼きそばをサンジに奪われモダン焼きにされる。
- お茶の間パパ (声: 国本武春): 海賊団「お茶の間海賊団」の船長。絶望的な状況でも家族を守ろうとする。
- ローザ (お茶の間パパの長女)、リック (お茶の間パパの長男)、デイジー (お茶の間パパの次女)
- ブリーフ (声: 安原義人): チョビヒゲ海賊団船長。チョビヒゲを生やした男。彼以外の団員はオマツリ男爵により全滅している。秘密基地を築いてレジスタンス運動を展開しており、島中にトンネルや抜け道などの秘密ルートを作っている。麦わらの一味を見込み、ルフィを援護した。
制作スタッフ
- 原作: 尾田栄一郎
- 監督: 細田守
- 脚本: 伊藤正宏
- キャラクターデザイン・作画監督: すしお、山下高明、久保田誓
- 公開日: 2005年3月5日
- 上映時間: 91分
- 音楽: 田中公平
- 主題歌: 氣志團「夢見る頃を過ぎても」
- 製作: 「ワンピース」製作委員会(フジテレビジョン、東映アニメーション、東映、集英社、バンダイ)(推定)
- 製作会社: 東映アニメーション
主題歌: 氣志團「夢見る頃を過ぎても」
賛否を含む評価
本作は「ONE PIECE」劇場版シリーズの中でも特にファンの間で賛否が大きく分かれる作品として知られています。
監督の細田守氏の作家性が色濃く反映された結果、従来の「ONE PIECE」の明るい冒険活劇とは異なるダークでシリアスな作風、仲間同士の衝突や疑心暗鬼といった重いテーマが描かれました。
この独特な雰囲気や、麦わらの一味のメンバーが精神的に追い詰められていく描写に対して、「ONE PIECEらしくない」「キャラクターのイメージと違う」といった否定的な意見が見られました。特に、仲間同士の絆が試される展開は、一部のファンにとっては受け入れがたいものだったようです。
一方で、その芸術性の高さや、人間の孤独や喪失感といった深遠なテーマに踏み込んだ意欲作として評価する声も多く存在します。「細田守監督の作品としては傑作」「普段のワンピースでは見られない深みがある」といった肯定的な意見や、作画のクオリティ、特に背景美術の美しさを称賛する声も上がっています。
公開当時のキャッチコピー「今度の映画、もれなく笑いがついてくる!!」「史上最大の笑劇!!」や、明るい雰囲気のポスタービジュアルと、実際の映画の内容とのギャップが大きかったことも、賛否を呼んだ一因とされています。
ピクシブ百科事典では、「トラウマ映画」として語られることもある一方、そのテーマ性や演出の独自性からカルト的な人気を持つ作品としても紹介されています。作中での麦わらの一味の関係性の変化や、敵キャラクターであるオマツリ男爵の悲しい過去などが議論の的となることが多いようです。
レビュー・解説動画集
関連URL
- 東映アニメーション 作品紹介: https://lineup.toei-anim.co.jp/ja/movie/2005_onepiece/
- ONE PIECE.com 劇場版ページ: https://one-piece.com/movie/o6/index.html
- ピクシブ百科事典: https://dic.pixiv.net/a/オマツリ男爵と秘密の島
まとめ
「ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島」は、これまでの「ONE PIECE」シリーズとは異なるテイストで描かれた意欲作です。監督を務めた細田守氏の作家性が前面に押し出され、シリアスでダークな物語が展開されます。麦わらの一味の絆が極限まで試される展開や、オマツリ男爵の抱える深い悲しみと島の秘密が、観る者に強烈な印象を残します。
楽しい冒険活劇を期待すると戸惑うかもしれませんが、キャラクターたちの内面や、人間の弱さ、そしてそれを乗り越えようとする姿を描いた深みのある作品として、今なお多くのファンに語り継がれています。普段とは違う角度から「ONE PIECE」の世界を楽しみたい方や、細田守監督のファンの方には、ぜひ一度ご覧いただきたい作品です。