
色で物語を読み解くという新しい視点
『Color of Film ストーリーを語るカラーパレット』は、映画における「色」の役割にフォーカスしたビジュアルブックです。名作映画100本を題材に、それぞれのカラーパレットが作品のストーリーテリングにどう貢献しているかを分析。美しいグラフィックと共に、映画表現の裏にある“色彩設計”を解き明かします。
本書の魅力と特徴
映画を“色”で語る、唯一無二のアプローチ
一般的な映画批評や解説本では、構成・演技・演出が語られることが多い中、本書は「色彩」に特化。赤、青、黄、モノクロームなど、色別に映画を分類することで、感情の動きや世界観の構築における色の力を可視化しています。
全100作品を色ごとに分類
紹介されている映画は、1920年代から2020年代までの多様な時代・国・ジャンルにまたがります。以下は一部抜粋です。
紹介作品の例(色別)
- 赤系統の映画:『ミッドサマー』『グランド・ブダペスト・ホテル』
- 青系統の映画:『ブロークバック・マウンテン』『ブルーバレンタイン』
- 黄系統の映画:『ラ・ラ・ランド』『ヘラクレス(ディズニー)』
- モノクローム:『ROMA/ローマ』『パターソン』
- 多彩・パステル・ネオンカラー:『マトリックス』『エターナル・サンシャイン』
映画のカラーパレットとともに、その配色が「どんな物語を、どんな印象で観客に届けているか」が丁寧に考察されています。
どんな人に向いているか?
映像表現を学ぶすべての人へ
- 映画やドラマを「感性」だけでなく「構造」から理解したい方
- デザイン・映像制作・広告・イラストなどビジュアル表現に関わる職種の方
- カラーパレットを活用したブランディングやプレゼン資料を作る機会が多い方
作品解説の背景には、色彩心理学や構成理論も見え隠れし、学術と感覚のバランスが秀逸です。
映画好きにも、デザイン初心者にも読みやすい
ビジュアル重視の構成でありながら、過度に専門的な言い回しや用語は使われておらず、読者にとっての敷居は低め。デザイン初心者にも“映画を通して色を学ぶ”という視点を提供してくれます。
書籍の構成とデザイン
見開き1作品、パレット+解説+静止画構成
各映画は1見開きで完結し、左ページに解説と配色図、右ページに代表的な静止画(スチルカット)を掲載。ページをめくるごとに“色の世界”を旅するような読書体験が得られます。
装丁・印刷の質感も高評価
紙質・印刷ともにクオリティが高く、インテリアブックとしても映える1冊。プロのデザイナーや映像ディレクターからの評価も高く、贈り物にも好適です。
著者について
著者:ジャン=フランソワ・リュック(Jean-François Lec)
フランスの映画研究者・デザイナー。映画と色彩に関する複数の出版歴を持ち、視覚文化と感情の関係性を研究。教育者としても活動しており、本書は彼の研究の集大成といえます。
まとめ:映画と色彩の新しい“翻訳”本
『Color of Film』は、映画という総合芸術における“色”の意図と効果を、視覚的に整理・言語化した画期的な一冊です。映像制作やデザインの現場で即活用できる実用性を持ちながら、映画愛好者にとっても新しい発見がある内容となっています。
「映画を見る目が変わる」──そんな一冊を求めているなら、間違いなく手に取る価値があります。
クレジット
- 書名:Color of Film ストーリーを語るカラーパレット
- 著者:ジャン=フランソワ・リュック(Jean-François Lec)
- 翻訳:林祥乃
- 出版社:グラフィック社
- 発売日:2023年11月13日
- ISBN:978-4-7661-3890-3
- ページ数:224ページ
- 判型:A5変型
- 価格:2,200円(税込)