書籍「文化系のためのヒップホップ入門3 (いりぐちアルテス010)」

出展:Amazon

近年、世界的な人気を誇るヒップホップ。しかし、その歴史や多様なスタイル、社会的な背景を深く理解している人は意外と少ないのではないでしょうか?

本書『文化系のためのヒップホップ入門3』(いりぐちアルテス010)は、そんなヒップホップ初心者、特に「文化系」と呼ばれるような、これまでロックやジャズ、クラシックなどを好んで聴いてきた人々に向けて、ヒップホップの世界を分かりやすく解説してくれる一冊です。

この記事では、本書の内容を詳細にレビューし、その魅力や特徴を紹介します。

書籍の基本情報

項目内容
著者長谷川町蔵、大和田俊之
出版社アルテスパブリッシング
出版年2019年12月
ISBN978-4865592146
ページ数272ページ

本書の概要

本書は、2015年から2018年までのヒップホップシーンを、政治、社会、文化的な文脈と絡めながら解説した書籍です。長谷川町蔵氏と大和田俊之氏による軽妙な対談形式で、ヒップホップの奥深い世界へと読者を誘います。

著者の意図

本書の著者である長谷川町蔵氏と大和田俊之氏は、ともにヒップホップに造詣が深く、それぞれライター/コラムニスト、慶應義塾大学法学部教授という立場から、独自の視点でヒップホップを分析しています。彼らは、「ヒップホップは音楽ではない」という独自の視点 を持ち、ヒップホップを単なる音楽ジャンルとして捉えるのではなく、社会や文化を反映した表現手段として捉え、その魅力を文化系の人々にも伝えたいという思いから本書を執筆しました。  

対象読者

本書は、以下のような読者を想定しています。

  • ヒップホップに興味はあるが、どこから聴いていいのかわからない人
  • ヒップホップの歴史や文化について深く知りたい人
  • 現代社会におけるヒップホップの役割について考えたい人
  • 文化系の視点からヒップホップを楽しみたい人  

本書の特徴

特徴説明
近年のヒップホップシーンに焦点を当てている2015年から2018年という、近年のヒップホップシーンにおける重要な変化を捉えています。
対談形式で書かれている読みやすく、理解しやすい構成です。
文化的な視点からヒップホップを分析している社会や文化とヒップホップの関係性について深く考察しています。
豊富なCDガイドが付いている本書で紹介されている楽曲をすぐに聴くことができます。
鼎談を収録アフリカン=アメリカン研究の専門家である有光道生氏との鼎談を収録し、オバマ政権下のアメリカ社会とヒップホップの関係を深く考察しています。

目次

本書は、以下の章で構成されています。

第1部 押し寄せる世代交代の波(2015年)

  • 2015年のヒップホップ:この章では、2015年のヒップホップシーンを概観し、当時のトレンドや重要アーティストなどを紹介します。
  • 『ストレイト・アウタ・コンプトン』現象:映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』がヒップホップシーンに与えた影響について考察します。
  • 2015年人気ナンバー・ワン・ラッパーはだれだ?:2015年に活躍したラッパーたちを比較し、その年のNo.1ラッパーを決定します。
  • ドレー版「私の履歴書」:ドクター・ドレーの自伝映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』を題材に、彼のキャリアを振り返ります。
  • 歴史化の象徴、ジョーイ・バッドアス:ジョーイ・バッドアスを例に、ヒップホップの歴史化について考察します。
  • トラップの牽引者、フューチャー:フューチャーを代表とするトラップミュージックの隆盛について解説します。
  • 新世代の旗手、ヤング・サグ:ヤング・サグなど、新世代のラッパーたちの台頭について分析します。
  • デトロイトの良心、ダニー・ブラウン:ダニー・ブラウンなど、デトロイト出身のラッパーたちの活躍を紹介します。
  • カニエ・ウェストの迷走と苦悩:カニエ・ウェストの音楽性や言動の変化について考察します。
  • ヒップホップと映画:ヒップホップと映画の関係性について、様々な事例を挙げながら解説します。  

第2部 大統領選とラッパーたち(2016年)

  • 2016年のヒップホップ:2016年のヒップホップシーンを概観し、当時の社会状況や政治的な動きとの関連性を分析します。
  • 大統領選とカニエ・ウェスト:カニエ・ウェストとドナルド・トランプの関係性など、大統領選挙がヒップホップシーンに与えた影響について考察します。
  • チャンス・ザ・ラッパーの登場:チャンス・ザ・ラッパーの登場がヒップホップシーンにもたらした変化について解説します。
  • トラップの進化と多様化:トラップミュージックの進化と多様化について、具体的な事例を挙げながら分析します。
  • サウンドクラウド・ラップの隆盛:サウンドクラウド・ラップの登場とその影響力について考察します。
  • ケンドリック・ラマーの社会派メッセージ:ケンドリック・ラマーの楽曲に込められた社会的なメッセージを読み解きます。
  • 女性ラッパーたちの活躍:ニッキー・ミナージュ、カーディ・Bなど、女性ラッパーたちの活躍について紹介します。
  • ヒップホップと政治:ヒップホップと政治の関係性について、歴史的な背景を踏まえながら解説します。  

第3部 ブラックネスのゆくえ~オバマ政権下のヒップホップとアメリカ社会 ゲスト:有光道生(慶應大学准教授)  

  • オバマ政権とヒップホップ:オバマ政権がヒップホップシーンに与えた影響について考察します。
  • ブラック・ライヴズ・マター運動とヒップホップ:ブラック・ライヴズ・マター運動とヒップホップの関係性について、具体的な事例を挙げながら解説します。
  • ヒップホップにおけるアイデンティティ:ヒップホップにおけるアイデンティティの表現について、人種やジェンダーなどの観点から分析します。
  • アメリカ社会における人種問題とヒップホップ:アメリカ社会における人種問題とヒップホップの関わりについて、歴史的な背景を踏まえながら考察します。
  • ヒップホップの未来:ヒップホップの未来について、様々な可能性を展望します。

読者レビュー

Amazonや読書メーターなどのサイトでは、本書に対して多くの読者レビューが寄せられています。

本書は、Amazonでは高評価を得ており、多くの読者が「文化系の視点からヒップホップを解説した良書」と評価しています。 読書メーターでは、  

  • 「トラップの分析が熱い」  
  • 「ヒップホップとアジアの関係性の変化について興味深い指摘があった」  
  • 「ストリーミングサービスやトラップなど、時代の変化を感じさせる内容だった」  
  • 「ヒップホップ入門編として、そして同時代を読み解く応用編としても楽しめる」  

といった意見が出ています。

関連情報

本書に関連する情報として、オンライン講義の情報があります。BIGAKKOというサイトで、本書の著者である大和田俊之氏、長谷川町蔵氏に加え、渡辺志保氏、荘子it氏を講師に迎えたオンライン講義「文化系のためのヒップホップ入門」が開催されています。販売期間は2021年12月31日まで、視聴期限は2022年1月31日までとなっています。  

著者情報

長谷川町蔵

1968年生まれのライター/コラムニスト。映画、音楽、文学など、幅広いジャンルで執筆活動を行っています。 他の著書に、『インナー・シティ・ブルース』、『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』、『あたしたちの未来はきっと』などがあります。  

大和田俊之

1970年生まれ。慶應義塾大学法学部教授。専門はアメリカ文化、ポピュラー音楽研究。 他の著書に、『アメリカ音楽史――ミンストレル・ショウ、ブルースからヒップホップまで』、『アメリカ音楽の新しい地図』、『ラップは何を映しているのか』などがあります。  

出版社情報

アルテスパブリッシングは、音楽関連の書籍や雑誌を出版している出版社です。特に、クラシック音楽やジャズ、ワールドミュージックなどの分野に力を入れています。 公式サイト (https://artespublishing.com/) では、出版物の情報やイベント情報などを発信しています。また、Facebook (アルテス公式 Facebook) やTwitter (アルテス公式 Twitter、代表鈴木の Twitter、代表木村の Twitter) でも情報発信を行っています。  

結論

『文化系のためのヒップホップ入門3』は、2015年から2018年までのヒップホップシーンを、文化系の視点から解説した興味深い書籍です。本書では、トラップの台頭やストリーミングサービスの普及など、近年のヒップホップシーンにおける重要な変化を捉え、トランプ政権の誕生やブラック・ライヴズ・マター運動といった社会現象との関連性についても深く考察しています。  

ライター/コラムニストの長谷川町蔵氏と、アメリカ文化研究の専門家である大和田俊之氏という、異なるバックグラウンドを持つ二人の著者による対談形式によって、文化的な視点と学術的な視点の両面からヒップホップを分析しており、読者は多角的な視点でヒップホップを理解することができます。  

本書を読むことで、ヒップホップの歴史、文化、社会的な背景を深く理解することができます。ヒップホップ初心者だけでなく、すでにヒップホップに親しんでいる人にとっても、新たな発見がある一冊と言えるでしょう。

ぜひ本書を手に取り、2015年から2018年という重要な時期のヒップホップシーンを、そして現代社会におけるヒップホップの役割について、考えてみてはいかがでしょうか。