
古き良き日本の面影を残す、どこか懐かしい「ボロ宿」。それは単に古いだけの宿ではなく、歴史と人情が織りなす、独特の魅力を秘めた空間です。本書「改訂版 日本ボロ宿紀行」は、そんなボロ宿の魅力を全国各地から紹介する旅行記です。
基本情報
項目 | 内容 |
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著者 | 上明戸 聡 |
出版社 | 鉄人社 |
出版年 | 2023年 |
ISBN | 9784865372533 |
本書は、2011年に出版された「日本ボロ宿紀行」と、その後刊行された「日本ボロ宿紀行2」を合本し、さらに新しい原稿を追加した改訂版です。 著者はフリーライターの上明戸聡氏で、ビジネス系専門誌の執筆を本業とする傍ら、趣味でボロ宿巡りを続けています。
読者の声
Amazonでは、具体的なレビューや評価は確認できませんでしたが、関連書籍やドラマ版の情報が多く見られました。 楽天ブックスでは、レビュー件数は4件で、総合評価は3.25でした。 読者からは、「懐かしい雰囲気の宿が多く、行ってみたいと思った」といった好意的な意見がある一方で、「女将に対する容姿の言及が多い点が気になった」「文章が平淡すぎる」といった意見も見られました。
読書メーターには、14件の感想・レビューが投稿されています。 「掃除が行き届いていて、ボロ宿とは思えないほど綺麗だった」「著者の宿や地域に対するリスペクトが感じられる」「ドラマ版も面白かった」といった好意的な意見がある一方で、「ボロ宿というほど古びていない宿も多い」「文章が淡々としていて、読み進めるのが少し大変だった」といった意見も見られました。
興味深いのは、本書のタイトルとは裏腹に、「ボロ宿というほど古びていない」という感想が見られる点です。 これは、著者が「ボロ宿」という言葉に込めた意味合いと、読者のイメージする「ボロ宿」との間に、ずれがあることを示唆しているのかもしれません。
内容紹介
本書では、著者が実際に宿泊した全国各地のボロ宿を、写真と文章で紹介しています。 歴史的建造物を利用した宿、湯治宿、商人宿など、様々なタイプのボロ宿が登場し、それぞれの宿の歴史や特徴、周辺の観光情報、そして宿の人々との触れ合いなどが、温かい筆致で描かれています。 宿で出会った人々との交流や、その土地ならではの文化や歴史に触れることができるのも、本書の魅力です。
出版社は本書について、「歴史的宿から湯治宿、商人宿、駅前旅館まで、古い建物を守りつつ営業を続けている宿にたまらない魅力を感じて旅する著者が、実際に泊った全国の昔懐かしい人情宿を温かみのある言葉で紹介しています。すなわち、ボロ宿とは最高の褒めことばです。2023年現在、日本はコロナ渦により旅行や移動に気を遣わざるを得ない状況にあります。中には、長らく旅行に行かれていない方も多いでしょうが、人間本来が持つ旅をしたい欲求は変わりません。むしろ長い間我慢を強いられてきたぶん、よりいっそう強まっている気がしています。願わくば、本書を読んだ方の“旅心”が刺激され、ふと旅行に行きたくなったとしたら、これに勝る喜びはありません」と述べています。
現代社会において、旅行は効率性や快適性が重視される傾向にあります。しかし、本書で紹介されているようなボロ宿は、 スタンダードな旅とは一線を画す、 懐かしさを感じさせる魅力にあふれています。 不便さや古さの中にこそ、真の旅の醍醐味があると言えるのではないでしょうか。
目次
- 第一章 昔の姿を残す青森の湯治宿
- 八戸 新むつ旅館
- 五所川原 音治郎温泉旅館
- 黒石 温湯温泉 飯塚旅館
- 第二章 花巻のお馴染み宿から、遠野へ
- 花巻 大沢温泉・自炊部
- 遠野 旅館福山荘
- 花巻 鉛温泉 藤三旅館
- 第三章 つげ義春ゆかりの宿を訪ねて西伊豆へ
- 伊豆 天城湯ヶ島温泉 白壁荘
- 松崎 長八の宿 山光荘
- 松崎 岩地温泉 民宿 大清水
- 第四章 忍者の里をさまよい歩く
- 伊賀 薫楽荘
- 第五章 伊勢から鳥羽へ歴史を訪ねる旅
- 伊勢 星出館
- 伊勢 旅館 海月
- 第六章 四国から瀬戸内を渡って尾道へ
- 松山 道後温泉 ホテル椿館
- 大崎上島 きのえ温泉 ホテル清風館
- 尾道 佐藤旅館
- 第七章 鳥取の限界集落と出雲への旅
- 智頭町 河内屋旅館
- 出雲 持田屋旅館
- 境港 かぐら旅館
- 第八章 熊本の日奈久温泉から鹿児島へ
- 八代 日奈久温泉 新湯旅館
- 出水 白木川内温泉
- 第九章 雪国を旅する
- 新潟 赤倉温泉 旅館 越後屋
- 山形 かみのやま温泉 名月荘
- 秋田 乳頭温泉郷 鶴の湯温泉
- 第十章 震災後の東北を巡る旅
- 岩手 陸前高田 一の関温泉
- 宮城 南三陸町 ホテル観洋
- 福島 飯坂温泉 吉川屋
あらすじ
本書は、著者が日本各地を旅する中で出会った、個性豊かなボロ宿を紹介する旅行記です。著者は、歴史を感じさせる建物や、温かい人情に触れられる宿に惹かれ、それらを「ボロ宿」と定義し、愛情を込めて紹介しています。 それぞれの宿には、歴史や文化、そしてそこで暮らす人々の物語が詰まっており、読者はまるで一緒に旅をしているかのような気分を味わえます。 本書を読むことで、日本の原風景とも言えるノスタルジックな風景や、人々の温かさに触れ、旅に出たくなる気持ちが掻き立てられるでしょう。
メディア展開
本書を原案としたテレビドラマ「日本ボロ宿紀行」が、2019年1月26日から4月13日までテレビ東京系列で放送されました。 主演は深川麻衣と高橋和也で、 深川は芸能事務所の社長兼マネージャー・篠宮春子を、高橋は一発屋のポップス歌手・桜庭龍二を演じています。
ドラマは、経営難に陥った芸能事務所の社長と所属歌手が、地方営業の旅に出る中で、様々なボロ宿に宿泊するというストーリーです。 書籍が実際のボロ宿の紹介をメインとしているのに対し、ドラマはフィクション仕立てになっている点が大きな違いです。
なお、ドラマ「日本ボロ宿紀行」は、2019年4月度ギャラクシー賞月間賞を受賞しています。
著者の他の作品や活動情報
上明戸聡氏は、「改訂版 日本ボロ宿紀行」以外にも、「日本ボロ宿紀行2」を出版しています。 また、ブログ「日本ボロ宿紀行」で、自身のボロ宿体験を綴っています。 これらの作品を通して、日本の伝統的な宿の魅力を発信し続けています。
まとめ
「改訂版 日本ボロ宿紀行」は、日本の原風景を感じることができる、心温まる旅行記です。著者のボロ宿に対する愛情が伝わってくる文章と、美しい写真の数々は、読者を懐かしい日本の旅へと誘います。ボロ宿に興味がある方はもちろん、日本の文化や歴史に触れたい方にもおすすめです。
本書は、単なる宿泊施設の紹介にとどまらず、そこに暮らす人々との触れ合いを通して、温かい人間関係や、失われつつある日本の伝統的な価値観を再認識させてくれます。 効率性や快適性が重視される現代において、本書が提示する「ボロ宿」という旅のスタイルは、改めて人間らしさや心の豊かさについて考えさせてくれるのではないでしょうか。