劇場版「ONE PIECE ねじまき島の冒険」

出展:hulu

作品の概要

劇場版ONE PIECEシリーズ第2作。原作には描かれていないアニメオリジナルのストーリー(非正史)です。時系列的には、ローグタウン編の後、リヴァース・マウンテンを越える直前(アニメ第45話~53話頃)にあたります。

春休みのファミリー層を主なターゲットとした「2001年春 東映アニメフェア」の一環として公開。『デジモンアドベンチャー02 ディアボロモンの逆襲』と、短編『ジャンゴのダンスカーニバル』が同時上映されました。この興行形態のため、上映時間は比較的短く、ストレートでアクション中心の分かりやすい構成になっています。また本作でコックのサンジが劇場版に初登場しました。

ストーリー:盗まれたメリー号とねじまき島の秘密

とある島でバカンスを楽しんでいた麦わらの一味(ルフィ、ゾロ、ナミ、ウソップ、サンジ)。しかし、目の前でゴーイングメリー号が何者かに盗まれてしまいます。船だけでなく、普段の服や武器まで失った一味は、結婚式用の貸衣装(ナミはウェディングドレス、サンジはタキシード、ゾロは紋付袴、ウソップは神主姿)という奇妙な格好で海を漂う羽目に。

そんな中、出会ったのが「泥棒兄弟」を名乗るボロードとアキース。彼らはねじまき島にある伝説の「ダイヤモンドクロック」を盗み、世界一の大泥棒になることを夢見ていました。メリー号を盗んだのは、ねじまき島を支配する「トランプ海賊団」ではないか? 兄弟の情報を頼りに、一味は奇妙なねじ仕掛けの島へと向かいます。

しかし、島へ向かう途中でナミがトランプ海賊団に誘拐されてしまいます。島に上陸したルフィたちを待っていたのは、ベアキング率いる海賊団による圧政と、強制労働に苦しむ島民たちの姿でした。ナミ救出とメリー号奪還を目指す中、サンジ、ウソップ、ゾロも次々と敵の罠にかかり捕らえられてしまいます。

絶体絶命の中、ルフィは仲間を救うため、そして島を解放するために、トランプ海賊団の船長ベアキングとの最終決戦に挑みます。激闘の末、強敵を打ち破るルフィですが、その衝撃で島を支える巨大なねじが破壊され、島は崩壊の危機に瀕します。混乱の中、明らかになるアキースの過去と島の秘密。果たして、一味は無事に島を脱出できるのか?そして、泥棒兄弟が下す決断とは…?

予告編

登場人物

麦わらの一味 (初期メンバー)

  • モンキー・D・ルフィ (声: 田中真弓): ゴムゴムの実の能力を駆使し、仲間と船を取り返すために、トランプ海賊団のボス・ベアキングに立ち向かいます。持ち前の行動力と仲間を思う気持ちは健在。
  • ロロノア・ゾロ (声: 中井和哉): 冷静沈着な剣士。本作では珍しい紋付袴姿で三刀流を振るい、トランプ海賊団幹部のピンジョーカーと剣を交えます。
  • ナミ (声: 岡村明美): 敵に囚われ、ウェディングドレス姿を披露することに。しかし、持ち前の気の強さで決して屈せず、反撃の機会をうかがいます。
  • ウソップ (声: 山口勝平): 臆病ながらも、ここぞという時には勇気を見せる狙撃手。本作では神主の衣装。幹部のスカンクワンによるガス攻撃に苦しめられます。
  • サンジ (声: 平田広明): 本作が記念すべき劇場版初登場。ナミ救出に燃える騎士道精神あふれるコック。得意の蹴り技で戦いますが、当初はビーチサンダルを履いていたため本領を発揮できず、靴を取り戻してから反撃に出るという見せ場があります。

オリジナルキャラクター

泥棒兄弟

  • ボロード (声: 堀内賢雄): 兄貴分。アキースを常に気にかける保護者的存在。過去にアキースを救うために左腕を失い、現在は機械の義手を装着しています。その行動は、ルフィにとってのシャンクスを彷彿とさせます。表向きはダイヤモンドクロックを狙っていますが、真の目的は別にあります。
  • アキース (声: 矢島晶子): 弟分で機械いじりが得意な少年。実はねじまき島の出身で、赤ん坊の頃、トランプ海賊団から逃がすために両親によって海へ流されたという過去を持ちます。両親から託されたオルゴールが、彼の出自の鍵となります。

トランプ海賊団

ねじまき島を武力で支配し、島民を苦しめる海賊団。トランプをモチーフにした名前や階級が特徴。

  • ベアキング (声: 玄田哲章): 船長。体を鋼鉄のように硬化させ、さらに体の一部を発熱させることもできる「カチカチの実」の能力者。7年前に島を占拠しました。(懸賞金は1160万ベリーとの情報もありますが、公式設定かは不明)
  • ハニークイーン (声: 林原めぐみ): 女性幹部。自身の体を液体状に変化させられる「トロトロの実」の能力者。能力使用時は衣服が液体化しないため全裸になることが多いですが、本人は意に介さない様子。サンジと対決します。
  • ピンジョーカー (声: 田中秀幸): 幹部。毒針が仕込まれた剣を使う剣士で、ゾロと対決します。
  • スカンクワン (声: 青野武): 幹部。強力な悪臭を放つガス兵器を使用し、ウソップを翻弄します。
  • ブージャック (声: 田の中勇): 幹部。全身にトゲの付いた鎧を纏っており、主にサンジと交戦します。

制作スタッフ

  • 原作: 尾田栄一郎
  • 監督: 志水淳児 (劇場版第1作『ONE PIECE』、第9作『エピソードオブチョッパー+ 冬に咲く、奇跡の桜』も担当)
  • 脚本: 橋本裕志 (TVドラマ『ショムニ』シリーズなど)
  • キャラクターデザイン・作画監督: 井上栄作 (『聖闘士星矢』『ドラゴンボール』シリーズなど)
  • 公開日: 2001年3月3日
  • 上映時間: 約60分 (資料により55分との記載もあり)
  • 音楽: 田中公平 (TVシリーズの劇伴も担当)
  • 原画: すしお(石崎寿夫)なども参加。(後に『天元突破グレンラガン』『キルラキル』などで活躍するアニメーター)
  • 製作: 東映、集英社、フジテレビジョン、バンダイ
  • 製作会社: 東映アニメーション

作品の評価と興行成績

興行収入

30億円。これは当時の『ONE PIECE』劇場版シリーズ最高記録であり、2009年公開の『STRONG WORLD』に抜かれるまで8年間記録を保持しました。2001年の日本映画興行収入ランキングでも上位(6位)に入る大ヒットとなり、シリーズの映画としての可能性を証明しました。

評価

興行的な成功とは対照的に、評価は賛否両論あります。

短い上映時間に合ったテンポの良さ、初期メンバー5人の魅力、サンジの活躍、分かりやすい冒険活劇としての面白さ、初期ならではのノスタルジーなどが評価されています。

否定的な意見として、ストーリーの単純さや予測可能性、敵キャラクターの掘り下げ不足、スケール感の小ささ、一部の作画品質、TVシリーズの延長線上(フィラー)のように感じられる点などが指摘されています。

受賞歴

興行的な成功が評価され、第19回ゴールデングロス賞の日本映画部門で優秀銀賞を受賞しました。

主題歌と関連音楽

主題歌

Folder5「Believe」 (作詞: 谷穂チロル / 作曲・編曲: GROOVE SURFERS)

本作の主題歌であると同時に、TVアニメシリーズの2代目オープニングテーマ(第48話~第115話)としても使用されました。これにより楽曲の知名度が飛躍的に高まり、映画とTVシリーズの双方を象徴する人気曲となりました。

同時上映短編『ジャンゴのダンスカーニバル』

約5分間のミュージカル風短編アニメ。ジャンゴがミラーボールアイランドでダンスを繰り広げ、麦わらの一味も登場します。

監督は西尾大介。主題歌「Ready!」もFolder5が担当。

特筆すべき点として、ジャンゴの声優がTVシリーズの矢尾一樹ではなく、高木渉が担当しています。

関連URL

まとめ:初期ワンピの魅力が詰まった快作!

『ONE PIECE ねじまき島の冒険』は、麦わらの一味の初期メンバー5人の活躍と絆をストレートに描いた、王道の冒険活劇です。後の「FILM」シリーズのような原作者監修による深みや壮大さとは異なりますが、テンポの良い展開、分かりやすい勧善懲悪、そしてサンジの劇場版デビューやヒット主題歌「Believe」など、本作ならではの見どころがたくさん詰まっています。

当時のアニメの熱気をそのままパッケージしたようなエネルギッシュな作品であり、シリーズの劇場版展開における初期の成功例として重要な一作です。イーストブルー時代の雰囲気が好きなファンや、初期メンバーの関係性を楽しみたい方には特におすすめできます。気軽に楽しめる約60分の中に、ワンピースの原点ともいえる冒険のワクワク感が凝縮されています。