
作品の概要
劇場版「ONE PIECE FILM Z」は、モンキー・D・ルフィ率いる麦わらの一味が2年間の修業を経て再集結し、「新世界」へと足を踏み入れた後の物語を描く、初の長編劇場作品です。原作者である尾田栄一郎先生が「総合プロデューサー」として名を連ね、これまでの劇場版作品と比較してもより深く制作に関与されたことで、物語の深みや原作との親和性が格段に向上しました。
本作は、後に「ONE PIECE FILM RED」が登場するまでシリーズ歴代最高の興行収入68.7億円を記録し、商業的にも大きな成功を収めました。魅力的な敵キャラクターや重厚で感動的なストーリーは、多くの批評家やファンから高く評価されています。尾田先生の「総合プロデューサー」という役割は形式的なものではなく、映画が「ONE PIECE」の核心的な精神性により忠実であることを目指す、制作方針の転換を示すものでした。
ストーリー
元海軍大将ゼット(Z)が率いる「NEO海軍」が、古代兵器にも匹敵するとされる強大なエネルギー鉱物「ダイナ岩」を強奪するところから物語は始まります。この事件は、新世界全体を消滅させかねないほどの危機へと発展します。
新世界を航海中の麦わらの一味は、傷を負ったゼットに遭遇し介抱しますが、ルフィが海賊であることを知ったゼットは彼らに襲いかかります。ゼットの壮大な計画は、新世界に存在する3つの「エンドポイント」をダイナ岩で破壊し、それによって引き起こされる大災害で全ての海賊を抹殺するというものでした。「全海賊抹殺」という彼の過激な思想の背景には、壮絶な過去が隠されていました。
麦わらの一味は、ゼットの部下であるアインの「モドモドの実」の能力により、ナミ、チョッパー、ロビン、ブルックが若返ってしまうなど、かつてない脅威にさらされます。物語は、麦わらの一味、NEO海軍、そして彼らを追う海軍本部による三つ巴の戦いへと発展。さらに、かつて海軍を離れた青キジ(クザン)も登場し、元教官であるゼットとの複雑な関係性の中で物語に関わってきます。
自由と仲間を守るというルフィの揺るぎない信念と、個人的なトラウマから生まれたゼットの極端な「正義」。新世界の運命を賭けた、二人の信念が激突します。
予告編
登場人物
本編のキャラクター
- モンキー・D・ルフィ (CV: 田中真弓) 麦わらの一味の船長。ゼットの野望に真っ向から立ち向かいます。
- ロロノア・ゾロ (CV: 中井和哉) 麦わらの一味の戦闘員(剣士)。NEO海軍との戦いを通じて、2年間の修業の成果を見せつけます。
- ナミ (CV: 岡村明美) 麦わらの一味の航海士。アインの能力で若返ってしまいますが、その知略で一味を導きます。
- ウソップ (CV: 山口勝平) 麦わらの一味の狙撃手。「ポップグリーン」を駆使して戦います。
- サンジ (CV: 平田広明) 麦わらの一味のコック。NEO海軍のビンズと激しい戦いを繰り広げます。
- トニートニー・チョッパー (CV: 大谷育江) 麦わらの一味の船医。アインの能力で幼い姿にされてしまいます。
- ニコ・ロビン (CV: 山口由里子) 麦わらの一味の考古学者。若返りながらも、その博識さでゼットの計画の謎に迫ります。
- フランキー (CV: 矢尾一樹) 麦わらの一味の船大工。サウザンドサニー号の新兵器や自身のサイボーグ能力で戦線を支えます。
- ブルック (CV: チョー) 麦わらの一味の音楽家。若返っても、その剣術と魂の力は健在です。
- 青キジ(クザン) (CV: 子安武人) 元海軍本部大将。海軍を離れた後も独自の立場でゼットの動向を追っており、麦わらの一味やゼットの前に姿を現します。
オリジナルキャラクター
- ゼット(ゼファー) (CV: 大塚芳忠) NEO海軍総帥で、元海軍本部大将。「黒腕のゼファー」の異名を持ち、かつてはガープやセンゴクと肩を並べ、多くの海兵を育て上げた伝説的な教官でした。海賊によって家族と部下を失い、右腕を奪われた過去から、全ての海賊を憎んでいます。右腕には海楼石製の巨大な武器「スマッシャー」を装着しています。
- アイン (CV: 篠原涼子) NEO海軍将校で、ゼットの側近。超人(パラミシア)系悪魔の実「モドモドの実」の能力者で、触れたものの時間を12年戻すことができます。ゼットに心酔しており、彼の計画遂行をサポートします。
- ビンズ (CV: 香川照之) NEO海軍将校で、ゼットの側近。忍者風の出で立ちで、俊敏な動きと体術を得意とします。超人(パラミシア)系悪魔の実「モサモサの実」の能力者で、植物の成長を操り攻撃します。
制作スタッフ
- 原作・総合プロデューサー: 尾田栄一郎
- 監督: 長峯達也
- 脚本: 鈴木おさむ
- キャラクターデザイン・総作画監督: 佐藤雅将
- 公開日: 2012年12月15日
- 上映時間: 108分
- 音楽: 田中公平、浜口史郎
- 主題歌: アヴリル・ラヴィーン 「How You Remind Me」「Bad Reputation」
- オープニングテーマ: 中田ヤスタカ (capsule) 「ZEAL」
- 原画: 大西亮、新田直大、馬越嘉彦、橋本敬史ほか
- 製作: 「ONE PIECE FILM Z」製作委員会 (フジテレビジョン、東映アニメーション、東映、集英社、バンダイナムコゲームス、バンダイ、木下工務店)
- 製作会社: 東映アニメーション
- 配給: 東映
- 興行収入: 68.7億円 (日本国内)
主題歌: Avril Lavigne – How You Remind Me (Official Audio):
主題歌: Avril Lavigne – Bad Reputation (Official Audio):
評価
肯定的意見
- 元海軍大将ゼットのキャラクター造形、背景、信念、そしてその生き様が非常に魅力的で、「カッコいい」「切ない」といった声が多く、敵キャラクターでありながら多くの観客の心を掴んだ。
- 尾田栄一郎総合プロデューサーの関与により、原作の世界観やキャラクター性が色濃く反映されており、ファンからの信頼が厚い。
- 戦闘シーンの作画クオリティが高く、迫力がある。特にゾロやサンジの活躍、冒頭のゼット対黄猿の戦いなどが高く評価されている。
- ゼットの最期や、それを見守る青キジの姿など、感動的で涙を誘うシーンが多い。
- 青キジ(クザン)の登場とその役割が物語に深みを与え、ファンを喜ばせた。
否定的意見または賛否が分かれる点
- 物語の展開や一部のプロットについて、ややご都合主義的と感じる意見や、もう少し深掘りしてほしかったという声も一部見られた。
- 多くのキャラクターに見せ場を作ろうとした結果、物語全体の焦点がやや散漫になったと感じる批評もあった。
- ゼットを襲った七武海の正体が明かされなかった点について、ファンの間で様々な憶測を呼んでいる。
レビュー・解説動画集
関連URL
- 公式サイト: https://one-piece.com/movie/o12/index.html
- 東映ビデオ 特集サイト: https://www.toei-video.co.jp/special/op_filmz/
- ピクシブ百科事典: https://dic.pixiv.net/a/Z(ONEPIECEの映画)
まとめ
「ONE PIECE FILM Z」は、新世界編に突入した麦わらの一味の成長と、伝説の元海軍大将ゼットの壮絶な過去と信念が交錯する、見応えのある作品です。尾田栄一郎先生が総合プロデューサーとして深く関わったことで、原作ファンも納得のクオリティとなっています。迫力のアクションシーンはもちろん、登場人物たちの熱いドラマにも注目です。まだご覧になっていない方は、この機会にぜひお楽しみください。