
作品の概要
2009年12月12日に公開された『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』は、大人気アニメ『ONE PIECE』の劇場版シリーズ第10作目にあたる記念碑的作品です。本作の最大の特徴は、原作者である尾田栄一郎先生が初めて製作総指揮を務め、映画のストーリー原案、キャラクターデザイン、クリーチャーデザインに至るまで全面的に手がけた点にあります。アニメ放送10周年記念作品ということもあり、ファンの期待は非常に高く、その期待に応えるクオリティと興行成績を記録しました。これまでの劇場版ワンピースとは一線を画す、原作者渾身の一作として、シリーズの新たなスタンダードを築いたと評価されています。
ストーリー
偉大なる航路(グランドライン)を航海中の麦わらの一味に、故郷「東の海(イーストブルー)」が壊滅的な危機に瀕しているという衝撃のニュースが飛び込んできます。ルフィたちが東の海へ帰還しようとしたその時、突如空飛ぶ巨大な海賊船が出現。その船に乗っていたのは、かつて海賊王ゴールド・ロジャーと覇を競った伝説の大海賊「金獅子のシキ」でした。
シキは悪魔の実「フワフワの実」の能力者で、自身の海賊船や島々を自在に空中に浮かせることができます。彼は麦わらの一味の航海士ナミの類まれなる気象センスに目をつけ、彼女を誘拐してしまいます。ルフィたちはシキの能力によって、空飛ぶ島々「メルヴィユ」へと散り散りに落とされてしまいました。
メルヴィユは、シキの能力で空中に浮かぶ独自の生態系を持つ島々で、そこでは凶暴に進化した動物たちが弱肉強食の生存競争を繰り広げていました。シキはこの島々を拠点に、強力な動物兵器と、故郷を人質に取ったナミの知識を利用して、世界征服という恐るべき計画を企てていたのです。
仲間であるナミを奪還するため、そして故郷の危機を救うため、麦わらの一味はメルヴィユの島々を冒険し、凶暴な動物たちやシキ配下の海賊たちと戦いながら、金獅子のシキとの最終決戦に挑みます。
予告編
登場人物
本編のキャラクター
- モンキー・D・ルフィ (声: 田中真弓): 麦わらの一味の船長。ゴムゴムの実の能力者。仲間のナミを奪還し、故郷の危機を救うため、伝説の海賊シキに立ち向かいます。本作では、飛行能力を持つシキに対抗するため、新たな戦い方を模索します。
- ロロノア・ゾロ (声: 中井和哉): 麦わらの一味の戦闘員(剣士)。三刀流の使い手。散り散りになった仲間を探し、合流を目指す中で、メルヴィユの凶暴な動物たちと渡り合います。決戦では得意の剣術で強敵に挑みます。
- ナミ (声: 岡村明美): 麦わらの一味の航海士。天候を読む才能に優れており、その能力をシキに狙われ誘拐されます。シキの計画阻止と脱出のため、持ち前の気丈さと知識で抵抗を試みます。
- ウソップ (声: 山口勝平): 麦わらの一味の狙撃手。臆病な面もありますが、仲間を思う気持ちは人一倍強く、様々な発明品や狙撃術で戦いに貢献します。メルヴィユの特殊な環境で新たな武器を開発することも。
- サンジ (声: 平田広明): 麦わらの一味のコック。足技の達人。女性に目がなく、特にナミの危機には熱く燃えます。本作でも得意の足技で敵を蹴散らし、ルフィたちをサポートします。料理の腕を振るう機会は少ないものの、その騎士道精神は健在です。
- トニートニー・チョッパー (声: 大谷育江): 麦わらの一味の船医。ヒトヒトの実を食べたトナカイ。動物と話せる能力や医学知識を活かし、メルヴィユの動物たちや傷ついた仲間を助けます。ランブルボールによる七段変形も健在です。
- ニコ・ロビン (声: 山口由里子): 麦わらの一味の考古学者。ハナハナの実の能力者。冷静沈着で、古代文字の知識や能力を駆使して、シキの島の謎や計画の解明に貢献します。
- フランキー (声: 矢尾一樹): 麦わらの一味の船大工(サイボーグ)。全身に武器を仕込んでおり、パワフルな攻撃を得意とします。サウザンドサニー号の修理や、島の施設を利用した兵器開発で活躍します。
- ブルック (声: チョー): 麦わらの一味の音楽家(剣士)。ヨミヨミの実を食べたガイコツ。剣術や音楽で仲間を鼓舞し、サポートします。持ち前の陽気さで、困難な状況でも一味を和ませます。
オリジナルキャラクター
- 金獅子のシキ (声: 竹中直人 ※特別出演): 本作の最大の敵。かつて海賊王ゴールド・ロジャーと渡り合い、「空飛ぶ海賊」として名を馳せた伝説の大海賊。「フワフワの実」の能力者で、自らが触れた自身以外の物体を浮かせることができます。頭部に刺さったままの舵輪が特徴。20年の雌伏を経て、世界征服計画を実行に移そうとします。ナミの類稀なる気象センスに目をつけ、彼女を自身の航海士にするため誘拐します。
- Dr.インディゴ (声: 中尾隆聖): シキの側近である科学者。動物を凶暴に進化させる薬品「I.Q.」を開発し、メルヴィユの動物たちを兵器化します。独特のピエロのような風貌と「カカカカ」という笑い方、足音を鳴らしながら早足で歩くなどの奇妙な言動が特徴的です。劇場版ではセリフが極端に少ないですが、その存在感は際立っています。
- スカーレット隊長 (声: 銀河万丈): シキ配下の幹部の一人で、赤いゴリラのような姿をした巨漢。メルヴィユに生息していたゴリラが進化したもので、島の珍獣たちの王者的存在でもあります。「ウホウホ」としか話しませんが、シキやインディゴとは意思疎通が可能です。美女に目がなく、ロビンを花嫁にしようとします。
- シャオ (声: 水田わさび): メルヴィユの村に住む少女。背中に小さな羽を持つ「翼を持つ人間」の生き残りで、シキの支配に苦しんでいます。薬草を採りに出かけたところを珍獣に襲われ、ゾロたちに助けられます。気が弱く、驚くとすぐに気絶してしまう癖があります。
- ビリー (声: 高戸靖広): メルヴィユに生息する、電気を発する鳥。非常に臆病な性格ですが、ナミに懐き、彼女を助けるため、そして故郷の島を守るために勇気を振り絞ってルフィたちに協力します。シキとの最終決戦において重要な役割を担います。
- 海賊キタジマ (声: 北島康介 ※特別出演): 魚人族の海賊。シキが「東の海」を壊滅させるために招集した海賊の一人として登場します。声優は、当時競泳の金メダリストとして国民的な人気を誇った北島康介さんが担当しました。
- エバー (声: 皆藤愛子 ※特別出演): 酒場の看板娘。こちらも劇中に少しだけ登場するキャラクターです。声優は、当時お天気キャスターとして活躍していた皆藤愛子さんが担当しました。
制作スタッフ
- 原作: 尾田栄一郎 (集英社 週刊「少年ジャンプ」連載)
- 監督: 境宗久
- 脚本: 上坂浩彦
- キャラクターデザイン・作画監督: 佐藤雅将
- 公開日: 2009年12月12日
- 上映時間: 113分
- 音楽: 田中公平、浜口史郎
- 主題歌: Mr.Children「fanfare」
- 製作: 「2009 ワンピース」製作委員会(集英社、フジテレビジョン、東映アニメーション、東映、バンダイ、バンダイナムコゲームス、アサツー ディ・ケイ)
- 製作会社: 東映アニメーション
- 配給: 東映
主題歌: Mr.Children「fanfare」
関連URL
レビュー・解説動画
まとめ
『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』は、原作者・尾田栄一郎先生が製作総指揮を務めたことで、原作の魅力が凝縮された、まさに「STRONG」な作品となりました。麦わらの一味の絆、迫力満点のアクション、そして金獅子のシキという圧倒的な存在感を放つ敵キャラクターとの戦いは、多くのファンを魅了し続けています。
本作の成功は、その後の劇場版『ONE PIECE』シリーズの方向性を決定づけるほど大きなものであり、原作ファンはもちろん、初めて『ONE PIECE』の映画を観る方にも自信をもっておすすめできる一作です。手に汗握る冒険活劇を、ぜひその目で確かめてみてください。